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「アンパンマンのマーチ」 高知県香美市



♪なんのために生まれて なにをして生きるのか こたえられないなんて そんなのはいやだ!
高知県香美市出身の漫画家やなせたかしさん(1919~2013年)が作詞した「アンパンマンのマーチ」を大人になってから聴くと、その歌詞の深さに驚く。子どもが歌うには難しい気もするが、どのような思いを込めたのだろうか。
同市立やなせたかし記念館の収蔵庫に、やなせさんが歌詞を書いた直筆の原稿用紙が保管されている。「いけ! 悲しみを消すために」を赤ペンで「いけ! みんなの夢まもるため」に書きかえるなど、試行錯誤の跡が見える。
「やなせたかし 明日をひらく言葉」(PHP研究所、2012年)の前書きで、やなせさんは冒頭の一節について「自分自身への問いかけであった」と語っている。「家族に短命な人が多い中、自分が長生きした意味を模索していたのでは」。そう読み解くのは、記念館学芸員の仙波美由記さん(45)。「明るいイメージの人だが、その裏には数々の苦労がある」
やなせさんは5歳で父と死別し、弟は海軍の人間魚雷「回天」に志願し亡くなった。自身も戦時中は兵隊として中国へ。暗号解読の担当だったが、そこで経験した耐えがたい空腹がアンパンマンを生むきっかけの一つになった。漫画家としても大ヒット作がないままに還暦を迎える。
そんな中でテレビアニメ「それいけ!アンパンマン」の放映が決まり、書いた歌詞だった。「弟を追悼したもの」ともいわれるが、仙波さんは「弟の死も消えないテーマとして抱えていたはずだが、もっと広い意味で人生を振り返ったのでは」と分析する。
だが、なぜ子ども向けの易しい表現を使わなかったのか。そこにはやなせさんの「子ども観」がある。
やなせさんは度々、「子どもは大人と同じ」と語ってきた。言葉や経験が追い付かないだけで、感覚では物事を対等に理解しているという考え方で、この詞も「胎教でモーツァルトやシューベルトを聞かせるのといっしょ」(「もうひとつのアンパンマン物語」、PHP研究所)と、自然と心に刻み込まれ、いつの日か役に立つことを願っていたようだ。
放送開始から33年目。当時の子どもたちは大人になった。私も約20年前にテレビの前で熱心に見ていた一人だが、試しにマーチを口ずさんでみると、最後の歌詞までスラスラと出てきた。問いかけにはまだ答えられそうもないものの、原稿用紙に残された赤ペンの跡から、「子どもたちのために」奮闘するやなせさんの姿を思い浮かべると、そっと背中を押されるようなぬくもりを感じた。(飯田拓)
◇
2011年の東日本大震災の後、避難所のラジオから「マーチ」が流れて子どもが合唱し、それを見た大人も勇気付けられたとのニュースが反響を呼んだ。90歳を過ぎたやなせさんは「引退」を口にしていたが、この話を聞いて生涯現
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